今回は、橈骨動脈に高度な石灰化を認め、他院では手術が困難と判断された患者さんに対して、自己血管による内シャント(AVF)を作製した症例をご紹介します。
症例のポイント
橈骨動脈は径こそ十分でしたが、血管壁の石灰化が非常に強く、通常の手術操作では血流遮断や吻合が難しい状態と他院で判断され、内シャント作成困難で長期留置カテーテルで透析を開始されておりました。一方、橈側皮静脈は十分な径と良好な弾性を有しており、患者様の年齢も50歳代ということで、自己血管内シャント作成をなんとかしたい状況でした。
今回の手術では、高度に石灰化した動脈をいかに安全にコントロールするかが最大のポイントとなりました。
① 血流遮断方法の工夫

画像のとおり、橈骨動脈は高度な石灰をしており、通常使用するBulldog鉗子だけでは血流遮断が全く得られなかったです。
血管鉗子でのクランプでは血管損傷のリスクがあると判断して、血管鉗子にラバーを組み合わせ、石灰化した血管壁への負担を抑えながら、ゆっくりと血管遮断しました。(下図)

② 吻合方法の工夫
動脈遮断が難しい症例であるので、通常の橈骨動脈-橈側皮静脈の端側吻合では、吻合部からの出血が強かった際に止血に難渋する可能性を考慮して、盲端から各種カテーテルがアプローチが出来る、機能的端側吻合を選択をし、非吸収性の止血剤もスタンバイをして吻合しました。

術後
吻合後、止血は問題なかったですが、前腕の中程で静脈拡張が弱く吻合部圧がやや高かったので、ハイリスク症例であったのでそのままVAIVTをして、良好なシャント血流が得られていることを確認しました。
高度な血管石灰化がある場合でも、血管径や静脈の状態を詳細に評価し、症例に応じて手術方法を工夫することで、自己血管によるAVFを作製できる場合があります。
私達は、一般的なシャント手術だけでなく、高度石灰化など手術が難しいと判断された症例についても、可能な限り自己血管を温存する治療を検討しています。
※本症例の画像は、患者さんの個人情報に配慮したうえで掲載しています。症例の掲載にあたっては、必要な説明・同意等を行っています。
